今回ご紹介する鳥が関連する書籍は、小川洋子さん著の『ことり』です。
表紙のデザインも素敵な本で、一目惚れして購入いたしました。
小鳥への愛情がとっても深いある兄弟の物語。
お兄ちゃんは元々、言語障害がある少年らしくポーポー語と言われる(弟がそう呼んでいる)言語を話します。
しかし、兄弟間と母親としか会話ができません。そんな兄ですが母と弟は尊敬しつつ愛情を持って暮らしていました。
その後、少年だった兄弟は大人になり、中年のおじさんになるのですが、たんたんとリズムを変えずに日々の生活をおくる描写や小鳥たちの登場が印象的なお話です。
弟のことを少年の頃からこの小説内では「小父さん」と表現し、主人公として描かれています。
さて、物語すべてを読みたい方はぜひ本を読んでいただきたのですが、今回はこの小説に登場する小鳥たちに注目したいと思います。
「ことり」には、様々な種類の鳥たちが登場します。
メジロ、カナリヤ、十姉妹、セキセイインコ、サザナミインコ、オカメインコ、桜文鳥、シナモン文鳥、、名前だけの登場も含めてですがこれだけの小鳥たちがお話の中に出てきます。その中でも「メジロ」が中心なのですが、その「歌声」にこの物語を読んだ後に興味がわいてくるんです。
主人公の「小父さん(おじさん)」は、バラ園のあるゲストハウスで働きながらの生活。図書館司書との淡い恋、鈴虫を小箱に入れて歩く老人、文鳥の耳飾りをつけた少女との出会い…。
規則正しく、大きな変化を求めない暮らしの中で小父さんは小さな幸せを見つけます。ですが、自分から多くを求めないために切なく終わるものがほとんど。「もっと幸せになって!小父さん!!」と応援したくなってしまいます笑
物語全体を通して、とっても物静かで生活に多くを望まない主人公。その心の傷ついた時、なんとも言えない焦燥感が感じられる物語でした。小鳥が好きな人ってこんな人が多いのかな・・・と勝手に考えちゃいました。
読むと心がしんと落ち着くような、そんな静かなお話です。